海外で日本語を教えています

日本語教師です。ネイティブスピーカーとしてだけでなく、色んな角度から日本語を見ていきたいと思っています。

『外国人力士はなぜ日本語がうまいのか』って思ったことない?【Kindle本】

Kindle Unlimidedに登録したので、最近はよく電子書籍を読んでいる。

日本語教育関係の本も読んで勉強しようと思い色々探していたところ、『外国人力士はなぜ日本語がうまいのか: あなたに役立つ「ことば習得」のコツ』という本を見つけた。

今まで外国人力士の日本語学習に関して特に何も考えたことはないけど、言われてみれば確かにそうだよねと思い、すぐにダウンロード。

本書によると、外国人力士の日本語のうまさには色々な理由が絡んでいるそうだ。簡単にまとめると、

  1.  日本語を学ばないと生きていけない環境に置かれるから(間違った日本語を使うとボコボコにされることもある!)
  2.  24時間、日本語漬けの環境だから
  3.  親方・兄弟子・おかみさん・髪結いさん・地域の人・後援会の人など色々な日本人と接する機会があるから
  4.  日本の国技である相撲の世界に身をおくなら、伝統文化を理解する必要があるから
  5.  常に世間から注目されるから

1は本当に本に書いてあった。ちょっと前に相撲界の暴力事件が話題になったけど、先輩力士が後輩に暴力を使ってたしなめるなんてことは昔からあったようで…(この本の刊行は2001年)。先輩に対して、外国人力士が失礼な言葉遣いをしてキレられたのだとか。「失礼だとは知らなかった」じゃ許されない世界なんですよね。

語学教育の分野では「イマージョン(目標とする言語にどっぷり漬かる教育法)」という言葉が知られているけど、外国人力士もまさに日本語にどっぷり漬かっている環境なのだ。一日の大半を過ごす稽古場ではもちろん日本語が飛び交うし、その他の時間もおしゃべりやカラオケ、テレビなどずっと日本語に触れている。相撲部屋の女将さんや床山(力士の髪を結う人)さんなど、何度も忍耐強く教えてくれる人もそばにいてくれるから、上達が早くなる。また、「相撲で強くなる!」という確固とした目標があるから、相撲を頑張っているうちに自然と日本語力も上がるみたい。

プロ野球の助っ人外国人と比べられていたけど、彼らは日本の球団側が「来ていただいている」というスタンスでお客様扱いだから、日本語を話すよう押し付けないし、通訳もつけてあげている。それに、来日してから修行に励む外国人力士と違って、助っ人外国人は既に完成された一流選手として来日する。この辺の扱いの違いも影響しているようだ。なかなか興味深い。

他に、はっとさせられたのは「教師は、学習者の自律的な学習を促すべき」という箇所。私は結構、生徒さんに何でもお膳立てしてあげちゃうタイプなんだけど、それじゃダメらしい。自分から進んでどんどん学ぶのが理想なんだとか。生徒の自立を促すことこそが教師の仕事で、生徒はいつか巣立っていくものなのだ。

さらに、外国人力士が色々な日本人に囲まれていたように、語学の先生だけでなく教室外でも目標言語話者との関係を築くべきだと説いていた。メル友をつくったり、交流パーティーに行ったり、街で困っている外国人観光客に話しかけてみたりと、とにかく外国語を話す状況を自ら作り出すこと。

 

こんな感じで、この本は日本語だけでなく語学教師全般にもおすすめだし、外国語を勉強している人にも役立つヒントがたくさんあると思う。